心電図判読のチェックリスト

・心電図に限らず、検査所見を見落としなくスムーズに拾うためには、自分なりのルーチンを決めておくことが大切である。

・ここでは、以下の心電図判読チェックリストに従って実際の判読手順を説明する。

全体の確認

P波とQRS-Tが対応しているか

1つのP波に対して、1つのQRS-Tが対応しているかを確認しましょう。

HR(心拍数)が60(50)~100であるか

心電図には1mmごとに線が引かれているが、5mmごとに濃い線となっている。1mmが0.04秒であり、5mmが0.2秒である。

ここで、QRS波の間隔が濃い線X個分とすると、QRS間隔は0.2Xである。

ゆえに心拍数= 300÷X(60÷0.2X)となる。

上の例では、QRS波の間隔は約4マスであり、300÷4 = 75/分で正常範囲である。

P波の確認

これからの話では、誘導についての理解があるものとして話を進めていきます。誘導については以下の記事で詳しく解説していますので、参照してください。

ⅠとⅡで陽性

P波は肢誘導において以下のような向きに進んでいく。

肢誘導上での心房興奮ベクトル(akaironasubi all rights reserved)

したがって、正常P波は、Ⅰ、II、aVFで陽性、aVRで陰性となるが、ⅠとⅡで陽性であることを確認すれば十分である。

Ⅱで幅3mm未満かつ高さ2.5mm未満

実はP波は右房の収縮によるものと、左房の収縮によるものの2つで出来ている。

したがって、右房拡大した場合には、以下のようになる。(赤が右房によるもの、青が左房によるもの)

高さが2.5mmを超える場合は右房拡大を疑う。

一方で左房拡大すると以下のようになる。

幅が3mmを超える場合は左房拡大を疑う。

以上まとめると、”Ⅱで幅3mm未満かつ高さ2.5mm未満”かどうかで、右房拡大、左房拡大の有無を確認することができる。

V1で P terminal force(Morris指数)が0.04mm・秒未満

P波は胸部誘導において以下のような向きに進んでいく。右房が興奮した後に、左房が興奮するため、P波の前半は赤色ベクトルが強く、後半では青色ベクトルが強くなる。

したがって、P波はV2〜V6で陽性となるが、V1においては右房波は陽性波であるが、左房波は陰性波となる。(以下の図の左を参照されたい。赤が右房波、青が左房波)

左房が拡大した場合には、これが右図のように変化し、溝が深くなる。

この溝の深さを評価するための指標が、P terminal force(Morris指数) = a(秒) x b(mm)であり、これが0.04mm・秒を超えるときには左房拡大を疑う。

PQ時間が3mm(0.12秒)以上、5mm(0.20秒)未満

これについての解説は後にゆずる。

終わりに

いかがだっただろうか?今回は、全体の確認〜P波の確認事項までについて述べた。次回QRS波以降について解説していきたいと思う。