WPW症候群

・心房と心室の間にケント束<Kent bundle>と呼ばれる副伝導路が存在する病態。ケント束は、①伝導速度がい、②不応期がい、③逆伝導がある のが特徴である。

・正常の房室結節経由での心室の興奮(黒矢印)よりもこの副伝導路の付着部にある心筋が早く興奮を始めるため、心電図上でδ(デルタ)波が発生する。

PQ時間が短縮し、(3mm:0.12秒以下)

QRS波は立ち上がりが緩やかな傾斜状(デルタ波)となり、

QRS時間が長くなる

・副伝導路の位置により、次のように分類される。

副伝導路の場所 V1誘導でのδ波 その他
A型 左室側壁 陰性 右軸偏位・右脚ブロック様
B型 右室側壁 陽性 左軸偏位・左脚ブロック様
C型 心室中隔 QS波

・副伝導路の関与したリエントリーが起こり、不整脈をきたしやすい。具体的には、房室回帰性頻拍(約80%)と偽性心室頻拍(約20%)である。

房室回帰性頻拍<atrioventricular reciprocating tachycardia : AVRT>

・以下のように、刺激が房室結節とケント束を通る経路で、房室間を旋回することで生じる。発作性上室性頻拍<paroxysmal supraventricular tachycardia : PSVT>の主要な原因の一つである。

※偽性心室頻拍

・WPW症候群の患者に心房細動が合併すると、心房の興奮が副伝導路を通じて心室へと伝導されるため、QRS幅の広い心室頻拍のような波形を呈する。

・心室頻拍と異なる点として、①RR間隔が不整である ②QRS波の立ち上がりがなめらかで幅広い(デルタ波がある)点が挙げられる。

・房室伝導を抑制すると、副伝導路への伝導を促進してしまうため、房室伝導抑制薬(ジギタリスやβ遮断薬等)は禁忌。

【医師国家試験111D21】

47歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。以前から1か月に2回程度の5分ほど続く動悸を自覚しており、2年前の健康診断でWPW症候群を指摘されていたが、医療機関は受診していなかった。本日20時ごろに突然意識を失って倒れたため、家族が救急車を要請した。脈は微弱(頻脈)。意識レベルはJCS I-30。心拍数172/分。血圧64/48mmHg。呼吸数28/分。SpO2 92%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。顔色は不良である。2年前の心電図(A)と今回の心電図(B)とを別に示す。

次に行うべき処置はどれか。

α遮断薬投与

β遮断薬投与

ジギタリス投与

カテコラミン投与

カルディオバージョン

(B)

【解説】

・若年者に見られる不整脈。(A)において、PQ時間の短縮(PQ時間<3mm)、QRS幅>2.5cmであり、デルタ波が見られることからwpw症候群が疑われる。

・(B)において、立ち上がりがなめらかで幅の広いQRS波を認める。(頻拍であるため、RR間隔は一定に見えるが、よく見ると不整である)

以上より偽性心室頻拍の診断となる。

解答: e:カルディオバージョン(b,cは房室伝導抑制薬であり、禁忌)

LGL症候群

機序

房室結節の一部または全体をバイパスするような副伝導路(房室結節内副伝導路や心房・ヒス束繊維により、PQ時間が短縮する。(3mm : 0.12秒未満)

ただし、QRS波形は正常である。

房室接合部調律でも、PQ時間が短縮していることがあるが、II、Ⅲ、aVFにおいて陰性であり、洞性P波と波形が異なることで鑑別できる。

ポイント

LGL症候群は以下で診断できる。

  • 洞性P波が見られる
  • PQ時間が3mm(0.12秒)未満
  • QRS波形は正常