
聴診で評価できるのは”換気”のみ

呼吸は、以下の3つの過程に分けて考えることができる。
- 換気(空気を肺胞まで送り届ける)
- 拡散(肺胞でのガス交換)
- 血液の酸素の受け取り(血が来るか、Hbが十分あるか)
聴診では、このうち換気の評価しかできない。
“呼吸音に異常なし”と言うために確認すること
- 副雑音が聴取されないこと
- 呼吸音に左右差がないこと
- 気管支呼吸音化が見られないこと
を確認することが必要である。したがって、以下のような手順・意識で聴診を行う。
具体的な聴診の手順
聴診の際には、右左交互に聴診機を当てながら、
1左右差がないか、2正しい場所で正しい種類の正常呼吸音が聞こえるかを意識して行うとよい。
副雑音は、それらしい音が聴こえた際に、聴診部位とその種類をしっかりと把握すれば良い。副雑音はその経時的変化に注意することが大切だ。
正常呼吸音
正常呼吸音の分類

正常な場所で、正常呼吸音が聞こえるかどうかを確認する。
※「気管支呼吸音化」とは
本来肺胞音が聞こえるはずの部位で、気管支音が聴取されるのが、「気管支肺胞音化」である。
音は空気よりも固体成分や水の方がよく通るため、肺全体が水っぽくなっている、あるいは固体成分の増加を伴う疾患が考えられる。
副雑音
呼吸器の異常がある際に、正常呼吸音に加えて聞こえる音を副雑音という。複雑音が聴取される場合には、その経時的変化を見ていくことが重要である。

高調性連続性副雑音<wheezes>
気道が狭まった結果、空気の通り道が比較的細くなることで聞こえる音である。
吸気時に聞こえるか、呼気時に聞こえるかは様々であり、聞こえたタイミングで気道が狭まっていると考える。
※連続性とは吸気も呼気も聴取されるという意味ではなく、音の持続時間が比較的長いという意味である。これは低調性連続性副雑音についても同様である。
低調性連続性副雑音<ronchi>
気道が狭まるものの、空気の通り道が比較的太く保たれた際に聞こえる音である。
吸気時に聞こえるか、呼気時に聞こえるかは様々であり、聞こえたタイミングで気道が狭まっていると考える。
粗い断続性副雑音<coase crackles>
気道内に水分が貯留し、その水分に空気が当たることによって生じる音である。
吸気時にも呼気時にも聞こえることがある。
細かい断続性副雑音<fine crackles>
繊維化等により、膨らみが悪い肺胞が膨らもうとする際に生じる音である。
吸気時にのみ聞こえるという点で、上の粗い断続性副雑音と鑑別できる。
胸膜摩擦音
臓側胸膜と壁側胸膜の滑らかさが失われ、膜同士が擦れることによって生じる音である。
肺の表面部分で聴取される音であるため、狭い範囲でのみ聴取される場合、胸膜摩擦音である可能性が高くなる。
生じる頻度は他の副雑音に比べ、圧倒的に低い。