浮腫の定義

細胞間隙(間質)に余分な水分が貯留し、皮膚が腫脹すること。

浮腫の原因

・以下の図をイメージする。静水圧の亢進、②膠質浸透圧の低下血管透過性の亢進、④リンパ管閉塞間質への沈着物 が考えられる。

浮腫の原因

①静水圧の上昇

静水圧 = ρVg(ρ:液体の密度 V:液体の体積 g:重力加速度)である。

・心不全、腎不全、肝硬変、深部静脈血栓症(DVT)、上大静脈(SVC)症候群、Budd-Chiari症候群を考える。いずれも、血管内の血液量が増加する(Vの↑)により、静水圧が上昇する。

②膠質浸透圧の低下

・膠質浸透圧の低下=低アルブミン血症である。低栄養、非代償性肝硬変、ネフローゼ症候群などが考えられる。

③血管透過性の亢進

血管性浮腫(Quincke浮腫)・アレルギー・薬剤性・炎症・外傷・複合性局所疼痛症候群(CRPS)などが挙げられる。

④リンパ管閉塞

・リンパ管の閉塞により浮腫をきたす病態を、リンパ浮腫という。

・リンパ浮腫では、リンパ管の閉塞により、リンパ管内の蛋白濃度が上昇する。したがって、細胞間隙に貯留する水分の流動性に乏しくなり、non-pitting edemaとなる。(発症初期を除く)

⑤間質への沈着物

・Basedow病、甲状腺機能低下症、浮腫性硬化症等が挙げられる。

・甲状腺機能低下症では上半身や口唇、舌の浮腫(ムコ多糖の沈着)、Basedow病では脛骨前粘液水腫(ムチンの沈着)などが見られる。これらの疾患では、流動性の低い物質が沈着するため、non-pitting edemaとなる。

pitting edema と non-pitting edema

軽く開いた3本指(第2~4指)で浮腫面を約10秒ほど強く圧迫し、指を離した後に凸凹を確認する。凸凹が残るものをpitting edema、凸凹が残らないものをnon-pitting edemaという。

・細胞間隙に貯留する水分に流動性がある場合はpitting edemaとなり、流動性に乏しい場合または深在性の場合non-pitting edemaとなる。

・non-pitting edemaをきたす疾患は比較的少数であり、甲状腺機能低下症、Basedow病、リンパ浮腫、血管性浮腫、浮腫性硬化症などがある。

fast/slow – recovering edema

・pitting edemaの中でも、圧痕浮腫が元に戻るまでの時間pit recovery timeが40秒未満のものをfast recovering edemaと言い40秒以上のものをslow recovering edemaと言う。

身体診察の手順

・①病変の部位(全身性か局所性か)、②pitting edemaかnon-pitting edemaか、③圧痛・熱感・発赤の強さを確認すること。

・下のフローチャートに沿って進める。

・寝たきりの患者では、仙骨部や背部に浮腫が見られることがあるので注意する。

まとめ

・浮腫の原因には、①静水圧の亢進、②膠質浸透圧の低下、③血管透過性の亢進、④リンパ管閉塞、⑤間質への沈着物がある。

・身体診察の際には、①病変の部位(全身性か局所性か)、②pitting edemaかnon-pitting edemaか、③圧痛・熱感・発赤の強さを確認することが大切で、この3つの情報で鑑別を進める。

・鑑別の際にはまず、“静水圧の上昇の有無”を確認する。静水圧が上昇している場合には、血管内の血液量が上昇する病態を考える。

・non-pitting edemaをきたす疾患は、甲状腺機能(亢進or低下)症、リンパ浮腫、血管性浮腫等比較的少数である。