磁気共鳴現象
・上の記事で述べたように、静磁場の中でプロトンは歳差運動を行う。プロトンの磁化ベクトルはZ軸に正の方向となっている。(図1)

・歳差運動をしているプロトンにRFパルスを加えると、励起→緩和する。これを磁気共鳴現象という。
励起
・RFパルスを加えると、歳差運動をしていた基底状態のプロトンが励起状態に変化する。(以下では90°パルスを例に考えてみる)
・基底状態のプロトンと励起状態のプロトンの数が等しくなるため、磁化ベクトルのZ軸方向成分=0となる。一方で、プロトンの位相が揃い、磁化ベクトルのxy方向成分が最大となる。

緩和
・励起状態にあったプロトンはエネルギーを失い、基底状態に戻る。これを縦緩和と言い、磁化ベクトルのZ軸方向成分が増加する。
・それぞれのプロトンは歳差運動の周波数や周囲を取り巻く磁場を乱す物質の量が異なる。これにより、プロトンの位相がずれる。これを横緩和と言い、磁化ベクトルのxy平面成分が減少する。

RFパルスとは
・RFパルスとは、プロトンの歳差運動と同じ周波数の電磁波であり、①位相を揃える、②プロトンを基底状態→励起状態に変えることができる。
・この下線部の変化は、下図のように片側から順に進行していく。(下図を見てみると、自転軸が左に傾いているものから順に進行していることが分かる)

・RFパルスの強さはフリップ角で定義する。フリップ角とは、RFパルスを掛ける前のプロトンの総和の磁化ベクトル(Z軸方向の正の向き)に対して、RFパルスをかけた後の総和の磁化ベクトルが傾いた角度のことである。(例えば、下の図において30°パルスをかけると、総和の磁化ベクトルは30°傾いていることが分かる)
・90°パルスは、ペアを作っていないプロトンの半数を基底状態→励起状態あるいは励起状態→基底状態に変化させている。
・180°パルスはペアを作っていないプロトンのすべてを基底状態→励起状態あるいは励起状態→基底状態に変化させている。

磁化ベクトルのx軸y軸z軸はプロトンの歳差運動と同じ周期で回転している。(回転座標系)