1からの情報収集の型

・以下はなるべく情報の漏れがないように問診をするための「型」である。実際の問診では以下の型に加えて、疑わしい疾患を想起しながらclosed questionで積極的に情報を取りにいく姿勢が常に求められる。

か・き・か・え

・”か・き・か・え”とは、”解釈”、”期待”、”感情”、”影響”の頭文字をとったものであり、患者の病気に対する理解と医療者への期待を把握するために必要な質問項目をまとめたものである。

“解釈”の質問例

「あなたは病気についてどう考えていますか?」

「あなたはどういうことを一番心配していますか?」

「自分では何か原因のようなものに思いあたりますか?」

“期待”の質問例

「なにかしてほしい検査や治療のことを考えて来られましたか?」

“感情”の質問例

「診断されたときにどう感じましたか?」

“影響”の質問例

「こういう状態になって、生活のどういうことが一番変わりましたか?」

「こういう状態になって何が一番困りましたか?」

現病歴

・現病歴とは、現在罹っている病気や症状の現在までの経緯である。

・患者の話を聞きながら、OPQRSTやABCDEFGの情報を埋めていく。

主訴

質問例:「今一番お困りの症状は何ですか?」

最も患者が困っている症状・医療者から見て、一番に解決すべき問題点、鑑別診断につながりやすい症状を選び、記載する際には,「医学用語」に置き換えて記載する。

OPQRST

・キーとなる病状をSQ(semantic qualifier : 普遍的な医学用語)で記載する。OPQRSTにしたがって情報を記載する。

O(onset: 発症様式)

質問例:

「その症状が起こったときに何をしていましたか?」→突然発症かどうかを確かめることができる。

「健康だと最後に感じていたのはいつですか」「いつまでは普段通り生活できていましたか。」

以下のように,時間が具体的に分かるような質問も有用である。

「何時ごろから痛みましたか.」「病院についた時には治まっていましたか」

P(provocation/palliative factor:増悪/寛解因子)

・鑑別疾患を想定しながら、closed questionで尋ねる。

「(胸膜炎を想起して)その胸の痛みは息を大きく吸ったり、咳き込んだりしたときにひどくなったりしませんか。」

「膵炎による後腹膜の痛みを想起して)背中が痛いということですが、背中を丸めて横向きになっているほうが楽ですか。」

Q(quality:性状)

R(region/radiation/related symptoms:部位/放散/関連症状)

鑑別疾患を想起しながら,症状の起こる部位や,関連症状を尋ねる.

S(severity:強さ)

熱:体温の数値

悪寒戦慄を伴う患者で、敗血症を疑うようなケースでは、①mild chills:寒気(上着を1枚羽織りたくなる),②moderate chills:悪寒(厚手の毛布をかぶりたくなる),③shaking chills:悪寒戦慄(厚手の
毛布をかぶっても全身の震えが止まらない)を聴取する。

痛み:10点満点のスケールや日常生活への影響で評価する。ADLも併せて確認すること。

T(time course:経時的変化)

発症してからの症状の変動推移を時系列で整理する。

ABCDEFG

Anamne&Allergy:既往歴(とその治療内容)・アレルギー
Back Ground:職業・趣味・住居・同居家族・ADL
Cook: 酒、喫煙
Detect:定期検診
Exposure:曝露歴(ペット、最近の旅行など)
Family:家族歴、キーパーソン
Gynecology:婦人科的事項(妊娠、月経など)性交歴

Anamne&Allergy:既往歴(とその治療内容)・アレルギー

・既往歴は、併存症(今も活動性のある疾患・治療歴も合わせて聴取)と既往症(過去に治癒した疾患)に分けて記載する。

・治療内容は、内服薬、手術歴、放射線照射歴を記載する。

・内服薬は、始めた時期をしっかりと記載する。

・アレルギー歴は、食物・薬・造影剤のそれぞれについて、どんな症状が出るのかも、聴取すること。

Back Ground:職業・住居・同居家族・ADL

・”仕事”と”家庭での生活”のイメージ

・ADLについては、病状の深刻度を評価するうえで役に立つため,病気になる前と病気になった後の両方を聴取すると良い。

・基本的日常生活動作(BADL):移動、排泄、接食、更衣、整容、入浴

Cook:食欲、酒、喫煙

・酒と喫煙に関しては、1日量と年数を記載する。

Detect:定期検診

・悪性腫瘍の可能性を考える上で重要である。

Exposure:曝露歴(ペット、最近の旅行など)

・感染症を疑う場合には必ず聴取する。

Family:家族歴、キーパーソン

Gynecology:婦人科的事項(妊娠、月経など)性交歴

・性交歴については,時と場所をわきまえて聴取する事。答えにくい場合には、「0ですか、それとも1ということでしょうか?」というように聞く方法もある。

三快一重

快眠・快食・快便・体重である。

・体重は、ベルトの位置、服のサイズなどにより,これまでの推移を推測することができる。