気管支 ②左鎖骨下動脈 ③鎖骨 ④左主気管支 ⑤大動脈弓 ⑥左上葉気管支 ⑦肺動脈 ⑧左下葉気管支 ⑨左肺動脈 ⑩下行大動脈 ⑪左室 ⑫胃泡 ⑬左傍脊椎線 ⑭奇静脈食道線 ⑮右房 ⑯横隔膜 ⑰右肺動脈 ⑱上大静脈 ⑲胸膜 ⑳右中幹気管支幹 ㉑右B3b ㉒右A3b ㉓右上葉気管支 ㉔右主気管支 ㉕奇静脈弓 ㉖後接合線 ㉗右心臓横隔膜角 ㉘右肋骨横隔膜角

気管支・肺

・①気管支が、㉔右主気管支と④左主気管支に分岐する。㉔右主気管支④左主気管支に比べて角度が急で太く短いため、誤嚥した異物は㉔右主気管支に入りやすい。

・肺動脈主幹部は気管支の前方に位置し、⑰右肺動脈、⑨左肺動脈へと分岐する。両者の走行場所は左右対称でないので注意が必要だ。⑰右肺動脈は気管支の方を走行し、なで肩であるのに対し、⑨左肺動脈は1.5cm程度高い場所を途中で左主気管支を乗り越えてを走行し、いかり肩である。

・⑤大動脈弓(正確には下行大動脈起始部)と⑨左肺動脈で囲まれた灰色の部位をAPwindowと言い、通常両者のなす角は鋭角である。APWindowが消失した場合、ボタローリンパ節の腫大や、腫瘤の存在を疑う。

肺動脈と気管支は伴走し、肺区域の中心部を走行する。肺静脈は区域の間を走行する。

・肺区域は右が10区域(S1~S10)、左は8区域である。(S1とS2がS1+2となり、S7がないため)

・㉑B3b、㉒A3bはそれぞれX線に対して平行に走行する気管支・肺動脈である。㉑B3bにて気管支壁の肥厚を観察しやすい。

・両側肺尖部にapical capと呼ばれる非特異性瘢痕陰影が見られる。(加齢性変化であり、病的意義なし)

横隔膜

・左に心臓があるため、右横隔膜は左横隔膜より1~2cm程度い。右横隔膜は第10後肋骨もしくは第6前肋骨の高さにある。肺が過膨張を示すと、横隔膜は低下する。(側面像では、胸骨と上行大動脈の間が増加する)

・左横隔膜の下には胃泡横行結腸脾湾曲の空気が見える。(胃泡は左横隔膜下1cm以内に見られるのが正常)

・肋骨横隔膜角は背部がもっとも深いため、胸水が溜まりやすい。確認には側面像が有用だ。

・一見横隔膜が挙上したように見える胸水を肺下胸水貯留と言い、確認には胸部側臥位正面(デクビタス)撮影、CT、エコーが有用だ。

心臓

・同じX線吸収度の構造が直接接すると境界が消失する。これをsilhouette sign陽性であると言う。(例えば、右第2弓が消失し、silhouette sign陽性となった場合、右心房に接して右心房部と同じX線吸収度の構造が存在することが示唆される。)

右第1弓 上大静脈(上行大動脈)
右第2弓 右心房 消失した場合、右中葉の病変を考える。
左第1弓 大動脈弓
左第2弓 肺動脈主幹部
左第3弓 左心房 内側に向かって凸であるのが正常である。消失した場合、左下葉の病変を考える。
左第4弓 左心室

・心影の拡大が見られた場合、心膜外脂肪塊・心拡大・心嚢液貯留を考える。

・心不全では以下のような所見が見られることがある。

心不全の程度 病態 レントゲン所見
軽度 肺静脈高血圧 血流の再分布
中等度 間質性肺水腫 カーリー線
高度 肺胞性肺水腫 バタフライ陰影

※血流の再分布

肺静脈圧が上昇すると、血流の再分布が起こる。(左心不全→下肺野優位の血流鬱滞と低酸素状態→下肺野の血管収縮による血流低下→相対的に上肺野の血管陰影の増強)

※カーリー線

小葉間隔壁の液体貯留による拡張である。

※バタフライ陰影

血管から肺胞への液体滲出である。(末梢部は肺門部に比べてリンパ流が発達しているため、肺門部に限局したバタフライ陰影を呈する)

・肺胞内の含気が低下すると、それとコントラストをなして気管支内の空気が低吸収域として描出される。これをエアロブロンコグラムと言う。一般に肺胞外の病変(間質性肺炎)や気管支が閉塞している場合には認めない。

レントゲンにおける場所と陰影の表現

・レントゲンにおける陰影の表現方法を以下に示す。

粒状影 直径5mm以下の限局する濃い陰影
結節影 直径5mm~3cmの限局する濃い陰影
腫瘤影 3cm以上の限局する濃い陰影
コンソリデーション(浸潤影)

内部の肺血管が認識できない均一な濃い陰影

すりガラス影 内部の肺血管を認識できる比較的均一な淡い陰影

・病変の場所の表現方法を以下に示す。

肺尖部 鎖骨より上部
上肺野 鎖骨〜第2肋骨前縁
中肺野 第2肋骨前縁〜第4肋骨前縁
下肺野 第4肋骨前縁〜横隔膜弓隆部
肺門部 第2次気管支まで
末梢部 第3次気管支より末梢側

肺病変と紛らわしい骨の良性病変

名称 病態 好発部位 特徴
肋軟骨石灰化 肋骨と軟骨の接合部に石灰化を生じた状態 第一肋骨と胸骨の接合部 不均一で下方への突出が多い。
肋骨の陳旧性骨折 骨折部位に、骨硬化(限局性の石灰化)を生じる状態 肋骨 肋骨との連続性・変形が見られる。上下の肋骨骨折の合併あり。
骨棘 骨に過度の負担がかかることで骨の一部が棘状に突出したもの 椎体 均一な濃度を示す。
骨島 骨髄腔に残存する正常緻密骨 骨盤骨・肋骨 均一・境界明瞭

読影の大まかな流れ

①正面性・撮影体位・線量の評価→②骨軟部組織・胸膜→③縦隔→④肺野→⑤見逃しやすい部位(肺尖部・肺門部・心臓や横隔膜の後ろ)の見直し 

の順で行う。