・脳血流が途絶し、脳の組織の壊死が起こる病態。原因により以下の3つに分類される。

原因 | 画像所見 | 発症 | ||
アテローム血栓性(=粥状硬化による主幹動脈〜穿通枝近位部の狭窄を背景に発症する) | 血栓性 | 粥状硬化病変部に血栓が付着(@内頚動脈・椎骨脳底動脈などの①主幹動脈) | 白質に散在する梗塞巣(皮質は軟膜髄膜吻合が側副血行路として働くため保たれる) | 緩徐(安静時や睡眠時) |
血行力学性 | 脳還流圧の高度低下 | 血管支配領域境界部 | ||
塞栓性 | プラーク(特に@ICA分岐部:①主幹動脈)の断片や血栓が塞栓子となり、穿通枝や皮質枝(灰白質+白質)を塞栓する |
梗塞巣の血行性分布(Trousseau症候群との鑑別) |
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分枝粥腫型梗塞(BAD) | ②穿通枝近位部(ex.レンズ核線条体動脈, 傍正中橋動脈)の粥状硬化 |
1.5cm以上であり細長い、必ず臨床症状を伴い、悪化することあり。 |
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ラクナ梗塞 | 高血圧による②穿通枝遠位部(白質のみ)の閉塞 | 梗塞巣は1.5cm以下で灰白質に見られない。 | ||
心原性脳塞栓 | 心由来の栓子による血管閉塞 | 動脈支配領域に一致した広範囲 | 突発 |
※アテローム血栓性脳梗塞の3つの分類(血栓性・血行力学性・塞栓性)は出来なくても良い。複数の要因が合併することもある。
※梗塞と塞栓の違い
梗塞 | 塞栓 |
終動脈の閉塞により、その遠位側で凝固壊死が起こること | 血流に乗って流れてきた栓子(血塊等の異物)が血管に詰まり、血流が途絶すること |
画像の経時的変化
病期 | 病態 | DWI | ADC | T2WI | CT |
〜1時間 | 還流障害 | なし | |||
〜1日 | 細胞傷害性浮腫 |
高 |
低 | なし | Early CT sign |
〜1週間 | 細胞障害性浮腫 + 血管性浮腫 | 高 | 低 | ||
〜1ヶ月 | 様々な所見を呈し、正常に見えることもある | ||||
1ヶ月〜 | 瘢痕化(脳脊髄液とほぼ同じ成分に変化) | 低 | 高 | 高(陳旧性ラクナ梗塞ではFLAIR像で周囲に高信号を認める) | 低 |
※細胞障害性灌流
細胞のNa-Kポンプが破綻することで、Naと水が細胞内に流入し、細胞が膨張する。それにより、細胞間隙が狭くなることで、間質水の拡散運動が制限される。(=DWI:高信号、ADC:低信号となる)
※血管性浮腫
血管透過性の亢進により血漿成分が細胞間隙に流入し、病巣の全体的な水分量が上昇する。(=T2WI:高信号となる)
early CT sign
・CTで急性期脳梗塞を診断する際の手がかりとなる所見である。
名称 | 発症から所見出現まで | 説明 |
hyperdense MCA sign | 発症直後 | 中大脳動脈内に血栓を反映した高吸収域を認める。動脈硬化による石灰化との鑑別が必要。 |
レンズ核の輪郭不明瞭化 | 1~2時間 | |
皮質白質境界・島皮質の不明瞭化 | 2~3時間 | |
脳溝の消失・脳実質の低信号化(early CT sign) |
3時間以降 |
脳実質の浮腫性変化による。 |
白質のT2高信号病変
ラクナ梗塞 | 白質病変 | 血管周囲腔 | |
病態 | 高血圧による穿通枝遠位部(白質のみ)の閉塞 | 白質の慢性虚血性変化 | 髄質動脈の血管拍動により、周囲が拡大したもの |
好発部位 | 基底核上2/3 | 大脳白質(前頭葉、頭頂葉)、基底核の下1/3、海馬 | |
T2WI | いずれでも高信号 | ||
T1WI | 低信号 | 等・低信号 | 等・低信号 |
FLAIR | 不定 | 明瞭な高信号 | 等・低信号 |
周囲 | T2WIやFLAIRで高信号 | 高信号なし |