・急性で重篤な神経症状を伴う低ナトリウム血症では脳ヘルニアをきたし致死的となるため直ちに補正が必要。慢性の場合は過剰補正に注意。

・緊急入院した患者の2~3人に1人は低ナトリウム血症である。

step1: 血漿浸透圧の測定

・血漿浸透圧を測定し、治療が必要な低張性低ナトリウム血症であることを確認する。(点滴ルートの有る側からの採血でないかも併せて確認する)高張性および等張性低ナトリウム血症には治療不要である。なぜなら、血漿浸透圧が低下することにより細胞外液から脳へと自由水が移行し、脳浮腫となることが問題だからだ。

・血漿浸透圧 = 2Na + 血糖値/18 + 尿素窒素/2.8(ただし、異常は理論値の計算方法であり、実際の血漿浸透圧とは乖離があるため浸透圧係数を乗じる必要がある)

原因
高張性 血漿浸透圧が上昇することで細胞内→細胞外へ水が移動する(高血糖・造影剤など) 治療不要
等張性 検査の仕組みの影響で見かけ上、低ナトリウムに見える(脂質異常症、M蛋白増加などが原因となる。ただし、血液ガス分析では正常に計測される)
低張性 Naの消失や水の増加(嘔吐、SIADH、腎不全、肝硬変など) 治療必要(脳浮腫になるため)

・低張性低ナトリウム血症の原因は自由水の摂取過剰や接食不足、ADH上昇がある。

step2: 尿浸透圧により水中毒・溶質摂取不足を除外

・最大希釈尿(<100mOsm/L)で多尿を呈する場合には、水中毒溶質摂取不足を考えたい。

・尿浸透圧は尿比重から概算できる。

尿浸透圧(概算) = (尿比重の下2桁) x 25 ~ 40

例:尿比重1.020 → 20 x (25~40) = 500 ~ 800 mOsm/L

問題:人は最大何Lの尿を排泄できるか?

最大希釈尿の浸透圧は50~100mOsm/kg , 一般的な食事での溶質負荷は1日約600~1200 mOsmである。ここでは例えば1日約600mOsm摂取している例を考える。

尿浸透圧 = 溶質 ÷ 尿量 ⟺ 尿量 = 溶質 ÷ 尿浸透圧なので、600 ÷ 50 = 12(L)

・治療は水制限。

step3: 尿中Na濃度と細胞外液量により鑑別

尿中Na濃度
≧30 mEq/L <30 mEq/L
細胞外液量 増加 SIADH 心不全・肝硬変・腎不全(①水・Na過剰)
減少

利尿薬・副腎不全・Renal Salt Wasting Syndrome(③Na欠乏)

嘔吐・下痢・熱傷(③Na欠乏)

・細胞外液量が減少している場合は原則的に上の図の①〜③のタイプで言えば、③Na欠乏であり、腎やその他の場所から水・Naの両方が失われる疾患を考える。

・尿中Na濃度≧30 mEq/Lの場合には、からNaが失われる疾患を考える。

(111B35)尿中Naの排泄低下を伴う低ナトリウム血症をきたすのはどれか。2つ選べ

a 尿細管障害

b Addison病

c SIADH

d 肝硬変

e 心不全

(解答)d,e