
肺炎グループ
インフルエンザ桿菌(H.influenzae)
・肺炎球菌と同じく、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎の原因菌となる。
・以下の4種類に分けられる。
BLPAS(β-Lactamase Producing Ampicillin Sensitive)
BLNAS(β-Lactamase Non-producing Ampicillin Sensitive)
BLPAR(β-Lactamase Producing Ampicillin Resistant),
BLNAR(β-Lactamase Non-producing Ampicillin Resistant)
BLPARはABPC/SBTでの治療が有効であるが、BLNARには無効である。したがって、肺炎の初期治療において誤嚥性肺炎を考えるなら、ABPC/SBTがbetterだが、誤嚥の可能性が低くてBLNARが流行している地域ならCTRXを選ぶと良い。
インフルエンザ桿菌における抗菌薬の選択まとめ
BLPAS, BLNAS | ABPC |
BLPAR | ABPC/SBT |
BLNAR | CTRX |
レジオネラ(Legionella)
・「温泉」がキーワード。意識障害、低Na血症、消化器症状といった多彩な全身症状を合併する。グラム染色で染まらず、ヒメネス染色が必要である。
・原因不明の低Na血症があれば、必ず鑑別に挙げるべきである。
クレブシエラ(Klebsiella pneumoniae)
アルコール多飲者、喫煙者、糖尿病患者等の生活習慣に問題がある人に肺炎をきたし、劇症化することがある。尿路感染症や腹腔内感染症の原因にもなる。
腸炎グループ
・全体的なイメージは以下のようになる。
(黄ブドウ球菌)、ビブリオ、ノロウイルス・ロタウイルス | 半日以内に発症する水溶性下痢 |
サルモネラ、エルニシア、EHEC、カンピロバクター | 3日程度で発症し、時折血便をきたす |
コレラ、赤痢菌、ETEC | 海外渡航歴あり |
光熱、血便、下痢回数が8回以上の場合は抗菌薬の適用と考えてよく、スメアで便中の白血球を確認しつつ、カンピロバクター探しを行う。カンピロバクターはgull-wingと呼ばれ、カモメのような形をしている。治療はマクロライド系。他の細菌性腸炎にはニューキノロン系で治療する。
小腸型:ビブリオ、エルシニア、大腸菌
Vibrio(ビブリオ簇)
魚介類から感染し、嘔気・嘔吐や水溶性下痢をきたす。夏に好発し、潜伏期間は半日程度と短い。
Yersinia(エルシニア)
ペット・飲料水・肉から感染し、回盲部に炎症をきたす。潜伏期は2~7日程度で長い。小児に多い。
大腸型:カンピロバクター、サルモネラ、大腸菌
Salmonella(サルモネラ)
鶏卵・ミドリガメ・肉(すき焼き系)から感染し、発熱や腹痛をメインにきたす。潜伏期は1~3日。
Campylobacter jejuni(カンピロバクター)
・鶏肉や牛乳から感染し、発熱や腹痛をきたす。粘血便が見られることもある。潜伏期は2~7日と長めである。低温に強く、食材を冷蔵庫に入れていても安心できない。
・ギラン・バレー症候群を1~3週間後に合併することがある。
海外渡航歴:コレラ、赤痢菌、大腸菌
Vibrio cholerae(コレラ)
海外渡航歴(特に東南アジア)が重要である。「米のとぎ汁様下痢」がキーワード。高度の電解質異常、脱水をきたすことが問題である。潜伏期は1~3日程度。発熱や腹痛を伴わない。
Shigella(赤痢菌)
海外渡航歴(特に東南アジア)が重要である。膿粘血便としぶり腹(便意があるのに便が出ない状態のことであり、直腸に炎症が波及していることを意味する)を呈する。潜伏期は1~3日。
E.Coli(大腸菌)
・以下の2種類は重篤な症状を呈するため重要である。
EHEC | O-157として有名。ベロ毒素を放出し、HUS(溶血性尿毒症症候群)や急性脳症を合併する。 |
EIEC | 赤痢菌に類似た症状を呈する。 |
・大腸菌は腸管外で、腹腔内感染症や尿路感染症、新生児髄膜炎の原因となる。
パピプペ千葉グループ
・パ:パターシス、ピ:ピロリ菌、プ:プロテウス、ぺ:ペスト、チ:チフス菌、バ:バルトネラの語呂合わせだ。
Bordetella pertussis
百日咳のことで、夜間にレプリーゼと呼ばれる特有の咳をきたす。発熱なし、炎症反応正常、リンパ球増加の3つが特徴的だ。
・日本ではDPTワクチンで予防されるため、乳児では稀であるが、ワクチンの効果が切れてきた成人で慢性咳嗽の原因となる。
・抗菌薬はマクロライド系を用いる。
H.pylori
・胃に慢性的に感染することで、胃癌や胃十二指腸潰瘍の原因となる。最も信頼性の高い検査は迅速ウレアーゼ試験であるが、内視鏡での生検が必要で、苦痛を伴う。感度・特異度、手軽さを総合的に考慮すると便中H.pylori抗原が良いとされている。
・治療は1st choiceは AMPC + CAM + PPI、2nd choiceはAMPC + MNZ + PPIを7日間飲み切りで除菌する。
Proteus
・主に尿路感染の原因となる。スウォーミングという性質を持っており、培地を覆い他の菌をマスクしてしまうことがある。
Yersinia pestis
・鼠やノミに噛まれることで感染する。広範囲の壊死や敗血症を引き起こす。全身が真っ黒になるため黒死病と呼ばれ、1類感染症に分類される。
Salmonella typhi
・海外渡航歴が重要であり、マクロファージの中で増殖する。マクロファージの中で限界まで増殖しきると、一気に飛び散り、敗血症に至る。バラ疹、比較的徐脈、好酸球減少の3つが特徴的である。
・パラチフス菌感染症はチフスの軽症バージョンのイメージ。
Bartonella
・猫ひっかき病の原因菌である。猫に引っ掻かれたり、噛まれたりした後に有痛性のリンパ節腫脹をきたすのが特徴である。
・免疫不全者では重篤化しやすいので注意が必要である。