・抗菌薬を選択する際には、βラクタム系(特にペニシリンG)から考える。自分がその抗菌薬を選択する理由(他の抗菌薬を選ばない理由)を明確にすることが大切だ。

スペクトラム/投与経路/副作用を意識して学ぶ。

・投与経路には点滴と経口がある。

点滴 経口
bioavailability 高い 低い
アドヒアランス 影響なし 影響あり
入院の必要性 原則入院 外来
効果 高い 低い

ペニシリンG(PCG)

・量の単位がPCGのみ「単位」である。

・PCG100万単位あたり1.7mEqのKを含んでいるため、高用量では高K血症に注意する。(K1gあたり13mEqであり、1日に必要なKは20~40mEqである)

・スペクトラムのイメージは、「黄色ブドウ球菌を除くグラム陽性菌によく効く!」である。

・具体的な適応として、A群β溶連菌による皮膚軟部組織感染症(壊死性筋膜炎を含む)、肺炎球菌による肺炎、緑色レンサ球菌による感染症心内膜炎、髄膜炎菌による髄膜炎、スピロヘータ(特に神経梅毒)、破傷風である。

・スピロヘータ等の特殊な症例は専門医にコンサルトすることが大切である。

アモキシシリン(AMPC)

・PCGの経口薬はbioavailabilityが悪く使いづらいが、AMPCはbioavailabilityが80%まで改善している。そのため外来で頻用される。

・具体的には、急性咽頭炎中耳炎・副鼻腔炎、梅毒、尿路感染症(外来レベル)、市中肺炎(外来レベル)、A群β溶連菌による皮膚軟部組織感染症、H.pyloriである。

・急性咽頭炎に使用する際には、EBVを除外することが大切である。皮疹を生じるため、禁忌である。

アンピシリン(ABPC)

・PCGほどではないが、点滴で頻回投与が必要である。

・ABPCが第一選択となる菌は、腸球菌リステリアである。いずれもセフェム系が無効な菌である。

ピペラシリン(PIPC)

緑膿菌に対する治療薬である。緑膿菌をカバーすべき状況≒入院治療が必須なので、点滴で用いる。

アモキシシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)

・βラクタマーゼ阻害薬を配合することで、スペクトラムが黄色ブドウ球菌(MSSA)嫌気性菌へと広がる。したがって、ほとんどの菌に効くイメージを持っておくと良い。ほとんどの菌に効くと言っても、重症の場合には点滴で治療を行うので、AMPC/CVAは用いない。軽症の場合に対してはスペクトラムが広すぎである。

・良い適応が動物咬傷である。動物(人間を含む)の口腔内は嫌気性菌が多い。ただし、入院(点滴)までは必要ないことが多いため、良い適応である。また、入院(点滴:ABPC/SBT)から外来治療(経口:AMPC/CVA)に変更する際にも適応となる。

・以上まとめると、適用となるのは、①動物咬傷、②ABPC/SBT適応疾患を外来で治療するとき、③AMPC耐性が考慮されるとき である。

アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)

・入院中に非常によく用いられる。BLNARはカバーできないが、嫌気性菌によく効くため、誤嚥性肺炎重症の腹腔内感染症膿瘍(肝膿瘍、脳膿瘍等)、糖尿病性足病変などによく用いられる。

ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)

ABPC/SBTの適応疾患に緑膿菌カバーが必要な場合に用いられる。PIPC/TAZを利用する前に、ABPC/SBTの適応疾患であることをきちんと確認すること。

・PIPC/TAZ 4.5gにはNa 9.4 mEq入っている。通常量では4.5g q6hで使用するため、約40mEq/day Naを投与することになるため、volume overにならないように注意すること。