ステロイド一覧表
一般名 | 生物学的半減期(h) | 糖質コルチコイド(力価比) | 鉱質コルチコイド(力価比) | 概算同等容量(mg) | 特徴 | 主な使い方 |
【短時間型】 | ||||||
ヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ®, コートリル®) | 8~12 | 1 | 1 | 20 | 内因性GC | 補充療法・気管支喘息発作 |
【中間型】 | ||||||
プレドニゾロン[PSL](プレドニン®) | 12~36 | 4 | 0.8 | 5 | 最も汎用されている | 抗炎症、免疫抑制、抗アレルギー作用(膠原病・腎・呼吸器・皮膚科など) |
メチルプレドニゾロン(ソル・メドロール®, メドロール®) | 5 | <0.01 | 4 | MC作用が少ないためステロイドパルスに用いられる | ||
トリアムシノロン(ケナコルト®) | 10 | <0.01 | 懸濁剤(水に不溶)→徐放剤、局注治療 | |||
【長時間作用型】 | ||||||
デキサメタゾン(デカドロン®), ベタメタゾン(リンデロン®) |
36~72 | 25 | <0.01 | 0.75 | GC受容体への結合力が強い(副作用も強い) | 副腎機能検査、制吐作用、緩和医療 |
・ヒドロコルチゾンは別名コルチゾールであり、ヒト副腎皮質から最も多く分泌される最も「生理的」な内因性糖質コルチコイドである。糖質コルチコイド:鉱質コルチコイド = 1:1. Addison病やステロイド離脱症候群(長時間ステロイドを内服している患者が急にストレスを受けたり、休薬した際に生じる)の治療に用いる。
・ヒドロコルチゾンは高用量で使用した際に、鉱質コルチコイド作用による副作用(水分貯留・電解質異常・心不全)が生じてしまう。そのため糖質コルチコイド作用を上げ、鉱質コルチコイド作用を抑えたステロイドを利用する。
使用時のポイント
・ステロイドを使う際には、①対象臓器、②病態、③合併症を明確にすることが大切である。ステロイドの種類、量、期間がこれらにより決定するからである。
・経口ステロイドの腸管吸収率は「ほぼ100%」である。したがってステロイドは原則経口投与される。ショックや腸管安静が必要などの経口摂取が困難な場合、ステロイドパルスなどの投与量が多い場合には静注を行う。
・生理的な副腎皮質ホルモンの分泌に合わせて「朝≧昼≧夜」の分量で分割投与を行うのが原則である。
副作用への対処
・ステロイドの副作用として感染症、糖尿病、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症、緑内障、白内障などが挙げられる。これらの副作用の発現はステロイドの用量・投与期間のいずれにも依存する。
副作用 | 発現時期 | 発現最小量(mg) |
糖尿病・高血糖 | 早期(日単位) | 2.5 |
精神異常 | 早期(日単位) | 不明 |
骨粗鬆症 | 早期(週単位) | 5 |
感染症 | 2週間~ | 10 |
Cushing症候群 | 1ヶ月~ | 5 |
心血管疾患 | 不明 | 7.5 |
皮膚異常 | 中〜晩期 | 不明 |
緑内障 | 7.5 | |
白内障 | 6 |
・一般的に糖尿病のスクリーニングには空腹時の血糖を確認するが、ステロイド糖尿病の場合は就寝前の血糖値を確認する。入院患者であれば午後3時頃や就寝前の1日2回測定する。(∵血糖値はステロイド投与後2~3時間で上昇し始め、5~8時間後にピークに達するから)
・ステロイドを3ヶ月以上使用する際には骨粗鬆症の発症リスクを評価し、適宜予防を行う。65歳以上の患者に3ヶ月ステロイドを投与する際には予防が必須となる。
・感染症はステロイドを10mg以上投与している患者で予防が必要である。具体的には真菌感染(ニューモシスチス、カンジダ、クリプトコッカス、アスペルギルス)やウイルス感染(サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス)が挙げられる。