不眠患者への問診
・睡眠薬を処方する前に患者さんの症状を詳しく問診し、非薬物的介入と睡眠衛生指導を行う。
・以下の内容を問診する
さ:サプリメント アルコール、カフェイン、薬剤、サプリメント
し:心身状況 基礎疾患、痛み、不安、治療環境
す:睡眠 就床時間、入眠までの時間、中途覚醒、起床時間、昼寝、日中の眠気
せ:生活リズム 職業、勤務形態、活動度、運動の有無、大まかな週間スケジュール
そ(ぞ):かぞくからの情報 いびき・無呼吸の有無、就寝中の変な行動がないか
た:対処行動 入眠までや中途覚醒時どのように対処しているか
非薬物的介入と睡眠衛生指導
例 | 対処法 |
普段5時間睡眠だけど、病棟では9時間眠らなきゃいけない? |
必ずしも9時間眠っている必要はない。周りに迷惑でない範囲で起きていてもOK |
眠れないからスマホをいじる | ブルーライトは入眠を妨げる。読書のほうが眠気を誘いやすい |
夜中に周りの音がうるさい | 部屋移動や耳栓の使用 |
トイレの回数が多い | 利尿薬や点滴タイミングの検討、泌尿器科的問題の検討 |
脚がむずむずしてしまう | レストレスレッグズ症候群の鑑別・治療 |
いびきがひどい | 睡眠時無呼吸症候群の鑑別・治療 |
痛みがある | 痛みの原因の鑑別・適切な対処 |
昼夜逆転気味 | 朝はカーテンを開けて光を浴びる |
冷や汗をかいて震える | アルコール離脱症候群の鑑別・治療 |
・不眠治療のゴールはあくまで患者のQOL向上とせん妄予防である。患者の熟眠感が得られなくても、「今の睡眠時間で大丈夫」と安心させることも大切である。
睡眠薬の種類
分類 | 一般名 | 商品名 | 作用時間 | 半減期(h) | 用量(mg) |
メラトニン受容体作動薬 | ラメルテオン | ロゼレム | 超短時間作用型 | 1 | 8 |
非ベンゾジアゼピン系(GABA受容体作動薬) | ゾルピデム | マイスリー | 2 | 5~10 | |
ゾピクロン | アモバン | 4 | 7.5~10 | ||
エスゾピクロン | ルネスタ | 5~6 | 1~3 | ||
ベンゾジアゼピン系(GABA受容体作動薬) | トリアゾラム | ハルシオン | 2~4 | 0.125~0.5 | |
エチゾラム | デパス | 短時間作用型 | 6 | 1~3 | |
ブロチゾラム | レンドルミン | 7 | 0.25~0.5 | ||
リルマザホン | リスミー | 10 | 1~2 | ||
ロルメタゼパム | エバミール ロラメット | 10 | 1~2 | ||
オレキシン受容体拮抗薬 | スボレキサント | ベルソムラ | 10 | 15~20 | |
ベンゾジアゼピン系(GABA受容体作動薬) | フルニトラゼパム | サイレース | 中間作用型 | 24 | 0.5~2 |
エスタゾラム | ユーロジン | 24 | 1~4 | ||
ニトラゼパム | ベンザリン ネルボン | 28 | 5~10 | ||
クアゼパム | ドラール | 36 | 15~30 | ||
フルラゼパム | ダルメート | 長時間作用型 | 65 | 10~30 | |
ハロキサゾラム | ソメリン | 85 | 5~10 |
・ベンゾジアゼピン系は睡眠時無呼吸症候群、閉塞隅角緑内障に禁忌、また呼吸抑制、転倒骨折の副作用があり、特に高齢者には注意が必要である。8ヶ月以上使用していると離脱症状出現のリスクが挙がるのでゆっくり減薬していく。
・ベルソムラはナルコレプシー患者に処方すると症状が悪化する可能性がある。
処方例
・①特に大きなリスクのない若年者:
ルネスタ®錠1回2mg(1錠)1日1回(不眠時)
・②大手術を控えている高齢者:
ソゼレム®錠1回8mg(1錠)1日1回(就寝前)
③すでにGABA受容体作動薬を内服している時に追加する場合:
ベルソムラ®錠1回20mg(1錠)1日1回(就寝前、65歳以上は1回15mg)
④内服不可のとき:
注射薬ではサイレース®があるが呼吸抑制が強いので本当に必要なのか適応を慎重に判断する。それでも使うときは
サイレース®静注2mg/mL(1A) + 生食100mLをSpO2モニター下で点滴、入眠止め。