血糖測定をするべき時
・糖尿病患者が入院した場合、原則として血糖測定を行う。
・糖尿病の既往がない患者でも、受診時 or 入院中に一度は必ず測定し、140mg/dlを超える場合には、HbA1cを追加で測定する。
・以下のような高血糖をきたす病態の患者に対しても血糖測定を行う。
1型糖尿病、2型糖尿病、ストレス高血糖(敗血症、急性冠症候群、脳卒中等の急性疾患による高血糖)、ブドウ糖の静注、経腸栄養剤の投与、薬物誘発性高血糖(ステロイド、経口避妊薬、サイアザイド系利尿薬、抗精神病薬、β刺激薬、HIV治療薬)、妊娠、膵疾患、内分泌疾患(Cushing症候群、先端肥大症、褐色細胞腫)、遺伝性疾患
・交感神経症状(原因のはっきりしない発汗、倦怠感、頻脈、動悸、振戦、空腹感等)や中枢神経症状(意識障害、易刺激性、痙攣等)といった低血糖を疑う場合にも血糖測定を行う。
管理目標
・患者により異なるが、インスリン療法を必要とする患者の血糖管理目標値は140~180の間とされている。厳格な血糖コントロールを行うことよりも低血糖を起こさないことが重要である。
強化インスリン療法(固定打ち)とスライディングスケール法
・健常人の膵臓からの内因性インスリン分泌には1日中一定量持続的に出る基礎分泌(basal)と、食事摂取に刺激されて大量に出る追加分泌(bolus)があり、この2つにより血糖値が一定に保たれている。このような生体内でのインスリン分泌を、作用持続時間の異なるインスリン製剤を用いて再現する方法を強化インスリン療法と言う。
・一方で測定された血糖値に応じてインスリン製剤を投与して血糖コントロールを図る方法をスライディングスケール法と言う。
・経口摂取が無く食事による血糖変動がない場合、シックデイで食事摂取が不安定な場合にはスライディングスケールを用いる。
強化インスリン療法
初期インスリン投与量の設定法
・年齢、腎機能、インスリン抵抗性に応じて1日総インスリン必要量を算出する。基本は体重(Kg) x 0.2~0.3単位/day.
・1日総インスリン必要量を基礎分泌分(30%~50%)と追加分泌3回分(50~70%)に分配する。追加分泌分を朝昼夕の3回分に均等に分配して設定。
インスリン投与量の調整
・朝食前血糖値が高い場合、基礎分泌に対する血糖を反映しているため持続型インスリンを調節する。
・各食前血糖値が高い場合、各追加分泌に対する血糖を反映しているため1つ前の超速効型インスリンで調整する。この調整するインスリンが責任インスリンである。
低血糖への対応
・ブドウ糖投与と原因検索ABCDEを行う。
・ブドウ糖粉末10g服用(菓子やジュースでも可)または50%ブドウ糖液20mgを投与する。15分後に血糖を再検し効果がなければ再度ブドウ糖粉末10g服用(菓子やジュースでも可)または50%ブドウ糖液20mgを投与する。
・以上でも改善無ければ10%ブドウ糖液持続投与を40ml/hrで開始する。30分~1時間ごとに血糖を再検し、低血糖の改善が見られない場合には10mL/hrずつ増量する。(高齢者の場合容量負荷による心不全に注意)
A:Alcohol(アルコール) |
B:Bacteria(敗血症) |
C:Cancer(癌) |
D:Drug(持効型インスリン・SU薬:いずれも作用時間が長い→圧倒的に多い |
E:Endocrine(インスリノーマ、インスリン自己免疫症候群、甲状腺疾患) |
F:Failure(肝不全、腎不全(インスリン排泄遅延)) |
高血糖への対応
・高血糖でDr.callされた際に考えるべきことは、①血糖をすぐに下げた方が良いのかどうか(糖尿病性ケトアシドーシス(DKA), 高血糖高浸透圧症候群(HHS)の可能性が無いか)、②高血糖を引き起こした原因への緊急介入が必要かどうか 判断することである。いずれも無ければ翌日以降の責任インスリン量を調整する。
・DKAおよびHHSの治療のポイントは、「脱水補正(生理食塩水投与)」「高血糖の是正(インスリン投与)」「電解質補正(Kの投与)」「原因の除去(アシドーシスの補正)」である。