病態と自然経過

・胆嚢頸部や胆嚢管に結石が嵌頓し胆嚢が緊満した状態が続くと、頸部で胆嚢血管が圧迫される。血管が圧迫されると動脈より静脈が先に閉塞するため、胆嚢壁に浮腫をきたす。この状態が早期の急性胆嚢炎である。(この時点では感染をきたしていないので、非感染性胆嚢炎)

・非感染性胆嚢炎の状態が持続し、腸内細菌が感染すると、胆汁が酸性に傾き、胆汁の色が黄色(ビリルビン)から緑や黒色(ビルベリジン)に変化する。(感染性胆嚢炎)

・感染により胆嚢内に膿瘍が形成され、胆嚢の圧があがり、頸部の血管はさらに圧迫される。一方で炎症により胆嚢の必要血流量は増加するため相対的に虚血となり、胆嚢の粘膜が壊死・脱落する。(壊死性胆嚢炎)

・さらにこの状態が続くと壁前奏が虚血となり、特に血流の乏しい底部の壁が全層壊死となり菲薄化し透過性を有する。胆嚢底部の一部が緑色に変色していて、周囲に胆汁がある。(oozing repture)

・胆嚢炎では汎発性腹膜炎を呈することは稀である。周囲を大網や結腸などの周囲組織がseal offし、漏れた胆汁が周囲に留まるからである。(胆嚢周囲膿瘍<peribladdar abscess>)

病歴

食後3時間前後(胃内容物が十二指腸に移動するタイミング)に始まる心窩部〜右季肋部痛であり、しばしば右背部痛を伴う。

・痛みの性状はacute onset, continuous painの型である。胆石・尿管結石などの”右系”の症状の特徴として七転八倒するような強い痛みであること(腹膜刺激症状が無いから動ける)、始まりも終わりもモードを切り替えたように「すごく痛い」から「全然痛くない」に一気に変わることである。

・嘔吐を伴うこともあるが、痛みのよるものでメインの症状とはならない。

・10歳台〜20歳台の男性では典型的でないから、遺伝性球状赤血球症<HS>も鑑別に挙げ、親が胆嚢/秘蔵の手術をしたか尋ねる。

身体所見

・腹部の膨満感はなく、腸雑音は聴取できる。

・圧痛は心窩部から右季肋部にあり、壊疽性胆嚢炎、穿孔性胆嚢炎でなければ腹膜刺激症状はない。

背部痛を自覚していないことが多いので、右肩甲骨下角の下あたりに手を触れて痛みがないか確認する。

・Murphy兆候は型どおりにやるのではなく、胆嚢の位置や深さを考慮して行うことが大切である。(腹部から胆嚢が容易に触れるのであれば、Murphy兆候をチェックする意義は乏しい。右横隔膜が極端に挙上していて吸気時にも胆嚢が肋骨弓まで降りてこないのならば陰性にしかならない。)

検査

・血液検査で特異的なものはない。AST/ALT・Bilが上昇するのは胆管のトラブルである。

・黄疸も基本的に見られない。ただし、①敗血症に至っている場合(せいぜいT-Bil<3)、②穿孔性胆嚢炎(漏れた胆汁が腹膜から吸収される)、③Mirizzi症候群(急性胆管炎を併発)の場合は例外的に見られる。