・ペニシリン系との違いを意識することが大切である。
・ペニシリン系と大きく異なる点が3つある。①腸球菌とリステリアをカバーしないこと ②一部を除き、嫌気性菌にあまり効かないこと ③経口薬が豊富なこと(bioavailabilityがあまり高くなく、中途半端な治療になってしまうため推奨されない) である。
・ペニシリン系アレルギーの患者では、同じβラクタム系であるセフェム系も使えないように思ってしまうが、ペニシリン系とセフェム系の交差反応は10%程度であるため、ほとんど問題なく使える。
・セフェム系の副作用として①偽膜性腸炎 ②嫌酒作用(お酒との服用で酷い2日酔いの状態になる) ③ビタミンK阻害 が挙げられる。
セファゾリン(CEZ)
・1:1対応でMSSA用の抗菌薬として覚える。スペクトラムはアミノペニシリン + MSSA のイメージである。
・皮膚軟部組織感染症、術前の予防投与、MSSAに対して用いられることが多い。
・抗菌スペクトラムの観点から呼吸器感染症には適さない。
・髄液や胆道系への移行性が悪いため注意が必要である。
セフォチアム(CTM)
・第1世代セフェムのスペクトラムに加えて、インフルエンザ桿菌やモラクセラ等の気道感染に対してよい適用である。
セフメタゾール(CMZ)
・グラム陰性桿菌 + 嫌気性菌をカバーするセフェム系の中でも特殊な存在である。軽症〜中等症の腹腔内感染症に良い適用である。(重症の場合にはABPC/SBTやPIPC/TAZ、MNZを用いた方が良い)
・下腹部手術前の予防投与やESBL産生菌(感受性が残っていれば)にも1st choiceである。
セフロキシム(CXM)
・経口薬として外来の尿路感染症を治療するのに用いられる。GPC、GNRの両方に中途半端に効果のある抗菌薬である。
セフトリアキソン(CTRX)
・半減期が長いため、1日1回投与で良い。肝排泄性であるため、腎機能低下のある患者でも使用できる。
・第3世代のセフェムであり、髄液移行性が良いため、髄膜炎に良い適用である。
・髄膜炎の1st choiceはCTRX + VCMである。
・市中肺炎・尿路感染症・髄膜炎・急性喉頭蓋炎・HACEKによる感染性心内膜炎・淋菌の治療に用いられる。
・ABPC/SBTは嫌気性菌によく効き、CTRXはBLNARによく効く。そのため、誤嚥性肺炎を疑うときにはABPC/SBTを選び、BLNARやモラクセラの感染を疑う場合にはCTRXを用いる。
・SBP(特発性細菌性腹膜炎)は背景に肝疾患があるのだから、肝排泄性のCTRXよりも腎排泄性のCTXを用いたほうが良い。
セフタジジム(CAZ)
・緑膿菌に対する抗菌薬である。CFPMとの違いは、GPCへの活性がほぼ無いことである。
セフェピム(CFPM)
・PIPC/TAZに比べて、腸球菌・リステリアやMSSA・嫌気性菌に対するカバーが無い。(あってもおまけ程度)
・AmpC過剰産生菌に対しては感受性があれば第一選択となる。
・腎機能障害のある患者に対して用いると、セフェピム脳症という副作用を引き起こすことがある。