主な病態 | 自覚症状 | |
上部尿路 | 腎盂腎炎 | 側腹部痛、発熱 |
下部尿路 | 膀胱炎 | 頻尿、排尿時痛、尿意切迫感 |
・一般的に下部尿路までの感染では発熱を伴わない。
・上部尿路感染症では菌血症を呈することがあるため、悪寒戦慄(止めようと思っても止まらないほどの震え)がないか聴取することが大切である。
・腎盂腎炎の際には、下部尿路症状は無いことの方が多い。発症初期にはCVA叩打痛もはっきりせず局所不明の発熱として受診することがある。(他に局所不明の発熱を呈するものとして、歯髄炎、肝膿瘍、化膿性胆管炎、感染性心内膜炎、前立腺炎、肛門周囲膿瘍、カテーテル関連血流感染症、蜂窩織炎、カンピロバクター腸炎の初期などが挙げられる)
・感度を上げてCVA叩打痛の所見を取る必要があり、左右差はないか、背中に重だるさや違和感はないかを確認する。陽性であれば本当に腎由来の痛みであるか確認するために腎の双手診を行う。
・診断の際には、膿尿(尿中白血球≧10個/mm^3) or 尿中白血球エステラーゼ陽性がほぼ必須である。(膿尿を認めない場合には尿路感染症は否定的である。ただし尿管が完全に閉塞している症例では膿尿がはっきりしないこともあるのが悩ましい)
・細菌尿(細菌数≧10^5個/mL)を認めることも確認する。ただし、糖尿病や高齢女性などの高リスク患者では細菌数≦10^5個/mLでも尿路感染症をきたすことがある。
・膿尿・細菌尿は非特異的所見であるため、あくまで尿路感染症の診断は除外診断である。
・明らかに腰背部痛を訴える場合には、尿路結石や腎膿瘍の有無をエコーやCTで確認した方が良い。腎盂腎炎のCT所見として腎臓周囲の脂肪織濃度上昇があるが、非特異的所見であるため注意が必要である。
・前立腺への移行性が良好な抗菌薬はニューキノロン系とST合剤である。